TCFD提言に基づく情報開示
基本的な考え方
三協立山グループは、長期的に目指す方向として2021年に「サステナビリティビジョン2050」を策定し、これに基づく2030年度を目標年度とするマテリアリティを定めております。また、長期的な経営方針して2021年7月に「VISION2030」を定め、重点戦略の1つに「サステナブルで豊かな暮らしに貢献」を掲げており、事業活動に伴う温室効果ガスの排出量削減や主要原材料であるアルミニウムの循環使用の促進、廃棄物の再資源化を推進しています。2021年12月にTCFD提言に賛同し、気候変動に関するリスクと機会が、事業活動、経営活動、財務計画に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、情報を開示していきます。
初めて分析を行った2022年は、建材事業に関する気候関連リスクと機会を特定し、2年目の2023年には、マテリアル事業・商業施設事業へと分析の範囲を広げており、今後もTCFD部会にて、気候関連リスクおよび機会の特定と評価の精緻化、充実化を進めてまいります。
TCFD : Task Force on Climate-related Financial Disclosures
気候関連財務情報開示タスクフォースの略。2016年に金融システムの安定化を図る国際的組織の金融安定理事会が設立。
ガバナンス
三協立山グループでは、気候変動への対応をマテリアリティの一つと考えており、TCFDの取り組みについてはサステナビリティ推進体制の中で行っています。2022年12月には、サステナビリティ推進委員会の組織としてTCFD部会を新設し、気候変動による事業へのリスクや、成長機会、重要課題を取締役会へ報告するための体制を強化しました。
戦略
気候変動によるリスクと機会の特定にあたり、当社グループ国内3事業のバリューチェーン全体を対象として、TCFDフレームワークに沿って整理し、重要性の評価を行いました。次に国際機関などが公表している外部シナリオをもとに、国内3事業について、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つの将来世界観を描き、2050年カーボンニュートラルを見据えた、2030年度時点における考慮すべき外部環境変化のシナリオを策定し、リスクと機会を特定しました。また、事業収益にもたらす影響の大きさにより、大・中・小の3段階で分類しました。
シナリオ分析
1.5℃シナリオ
環境政策および規制が強化され、カーボンプライシングが導入される。再生可能エネルギー導入や低炭素技術、環境配慮商品供給への投資が要求されるため、エネルギー調達コストや原材料調達コストが増大する。一方、市場では脱炭素関連商材の需要が増加し、環境配慮商品へのシフトが大きく進む。再エネ、省エネに関する技術革新も進展する。
参考シナリオネットゼロ排出シナリオ(NZE)
4℃シナリオ
環境政策および規制の強化は先延ばしされ、CO₂排出量の削減は進まず、カーボンプライシングも導入されない。そのため、地球温暖化がさらに進展することで、異常気象による台風や洪水などの増加・激甚化が進み、工場やサプライチェーンの維持コストが増加する。また、ナショナリズムが台頭し、地政学リスクが増加する。一方、激甚災害への備えが必要なことから、防災商品の需要が増加する。
参考シナリオ現行政策シナリオ(CPS)、SSP3
評価の基準
■ 発生時期
短期 | 中期 | 長期 |
---|---|---|
2022年度~2024年度 (中期経営計画) |
2025年度~2030年度 (VISION2030) |
2031年度~2050年度 (サステナビリティビジョン2050) |
■ 影響度
2030年度における財務影響を推定し、大・中・小の3段階評価
シナリオ分析によるリスクと機会の具体的な影響度評価
リスク/機会 | 事業に及ぼす影響 (当社への影響) |
発生時期 | 影響度 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
建材 | マテリアル | 商業施設 | ||||||
1.5℃ | 移行リスク | 法規制 | 炭素税の導入 | 炭素税の導入による操業コスト増加 | 中~長期 | 大※1 | ||
原材料への価格転嫁 | アルミ地金の調達コスト増加 | 中~長期 | 大※1 | |||||
ゼロカーボン対応の建築基準法の施行 | カーボンフットプリントの削減要件を満足できず販売機会を損失 | 中~長期 | 小 | 小 | - | |||
市場・評判 | リサイクルアルミの需要の増加 | 溶解炉ライン構想見直し費用の発生 | 中~長期 | 中※1 | ||||
機会 | 断熱性向上のためのリフォーム需要の増加 | 高断熱性商品の需要の増加 | 短~長期 | 中 | - | - | ||
リサイクルアルミの需要の増加 | リサイクルアルミを使用した商品の需要の増加 | 中~長期 | ※2 | - | ||||
4℃ | 物理的リスク | 急性 | 異常気象の深刻化・激甚化(水害の発生) | 自社工場被災による売上機会の喪失 | 短~長期 | 大※1 | ||
慢性 | 気候変動に起因する感染症の発生・増加 | 感染症対策による国内と海外のサプライチェーン寸断 | 短~長期 | - | - | 小 | ||
機会 | 異常気象の深刻化・激甚化 | 防災関連商材の需要の増加 | 短~長期 | 中 | - | - |
※1影響度は3事業合わせて記載しております
※2定量化に必要なパラメータ不足により、財務影響は非算出のため影響度は記載しておりません
影響度の高いリスクと機会への対応状況
炭素税の導入による操業コスト増加 [対応]CO₂排出量の削減 |
温室効果ガス排出量削減の取り組み |
---|---|
アルミ地金の調達コスト増加 [対応]循環アルミの使用促進 |
資源の有効活用 |
リスク管理
三協立山グループでは、サステナビリティ推進委員会に設置されたTCFD部会のもと、各カンパニーの事業企画、営業、開発、生産部門などの関係者が参加し、直接操業や上流、下流のバリューチェーンに関連する気候関連リスクと機会について、発生頻度、影響範囲等から分析を行い、対応策等を総合的に評価し、優先度合いを決定しております。このプロセスに基づき特定した重要度の高いリスクと機会については、TCFD部会と各カンパニーの関連部署にて行うワークショップで、対応施策など議論を重ねた上で、年4回定期開催されるサステナビリティ推進委員会およびサステナビリティ政策委員会へ報告しております。両委員会で重要課題と判断されたリスクおよび機会については、必要に応じて取締役会へ報告するほか、TCFD部会を通じて関連部署へフィードバックしております。また、進捗は定期的にサステナビリティ推進委員会、サステナビリティ政策委員会に報告し、取り組みに対するモニタリングを行っています。
指標と目標
三協立山グループは、「サステナビリティビジョン2050」にて、2050年のカーボンニュートラルへの挑戦を掲げており、マテリアリティの1つとして「気候変動への対応」に取り組んでいます。マテリアリティの中期目標として、2030年度までに温室効果ガス排出量を2017年度比で三協立山グループのScope1+2を50%削減することを目指します。
対象地域 | 対象スコープ | 目標(基準年2017年度) |
---|---|---|
三協立山グループ | Scope1+2 | 2030年度 50%削減 |