人財を未来へつなぐ
生き生き働くとは
Q1「生き生き働けているな」と感じるのはどんな時ですか。逆に、そう感じづらいのはどのような場面ですか。
島田:私は入社18年目で、エクステリアの商品開発を主として手掛けています。毎年、春のカタログに向けて、約1年かけて新商品の開発を行います。自分なりに開発テーマの目的を理解し、その目的に向けて、設計、試作、工場の方の協力も得ながら仕事を進め、商品化を無事やり遂げた時には、生き生きと働けていると感じます。やはり、自分がコントロールできる範囲で効率よく仕事が進められると楽しいです。私自身は、自分が商品化した製品が発売されると、嬉しいというよりも大丈夫かなと心配になる性格なのですが、展示会で直接お客様から評価をいただいたり、営業担当から良いフィードバックがあったときはとても嬉しいです。一方で、業務が忙しくなり疲労がたまると効率が落ち、生き生きと働けている気持ちも薄れます。
道下:私は入社21年目で今は労働組合の本部に所属しています。5年前までは工場勤務で、ラインの改善やレイアウトの変更、設備の導入・メンテなどの工程技術の業務を行いながら、労働組合の支部役員として携わっていました。今は機械ではなく人との対話がメインの仕事となり、受けた相談が解決できて感謝されると、この仕事をやってよかったなと働きがいを感じます。春闘や賃金交渉で厳しい回答があると、それを組合員に説明するのに思い悩みますし、想像していた通り厳しいことを言われると、落ち込むこともあります。そのような時は、同じような思いを経験されている組合の先輩方と思いを共有しながら、説明して納得してもらうことが大事だと考え直し、乗り越えています。
Q2社員が「生き生き働く」ために、人事として特に大切にしていることは何ですか。
北橋:社員が生き生き働くために、基盤となるのは安全と健康です。その上で人事部が大切にしているのは、社員が自己効力感を感じられること、自分の強みや特性が仕事で生かされること、そして成長できる環境を創っていくことです。私は、会社と社員は主従関係ではなく、相思相愛のパートナーでなければならないと考えています。今は、指示待ちの受動的なスタイルで仕事をしていればよい時代ではありません。一人ひとりが生産性を高められるよう、個の自律を促す形へと組織の制度を変え、自己実現を図れる組織で、社員の皆さんが三協立山にいることを誇りに思っていただけるようにしていきたいと考えています。
道下:パートナーとおっしゃいましたが、私も労使はパートナーだと思っています。春闘などで思った通りの回答をもらえないと、ストライキという手段もありますが、私自身は、そこは労使協調でいくべきだと思っています。一方で、社員一人ひとりのベースで見ると、愛社精神がパートナーのレベルにまで行っていない人がいるのも事実です。
島田:私は30代の時に、急に任される仕事が増えた上に立場も変わり、自分へのフォローが減ったために、仕事を続けていけるか悩んだことがありますが、今はそれを乗り越えています。ただ、若手や子育て中の社員がもう少し働きやすく、また退職された人ともその後何らかのつながりを保てるともっと良いのではないかと思います。
Q3社員が生き生きと働ける環境は企業にとってなぜ重要なのでしょうか。
篠田:一人ひとりがやりたいことに取り組めると活力が生まれますし、自分の貢献が他者に認められることで自己効力感が育まれ、生き生きと働く原動力にもなります。職場でこの状態を実現するには、個々の強みや志向を的確に把握し、本人に合った仕事を任せ、しかもその仕事に意義を感じられることが重要です。
意義を感じることでパフォーマンスが高まり、アイデアが生まれ、効率化への意欲も湧いてきます。ポジティブな状態が続けば、心身の健康も保ちやすくなりますし、生き生きと働く姿は周囲にも良い影響を与えます。こうした好循環が組織全体の雰囲気を高め、相乗効果を生み出していくことになります。
評価やキャリアの透明性
Q4評価や昇格で「納得できた」と感じた逆に「モヤっとした」経験があれば教えてください。
島田:私はこれまで評価について説明されたことがないため、評価に対して実感を持てたことがありません。一方で、新商品の発売日が全体として早まった年があったのですが、その時にしっかり対応できたことは高く評価いただきました。ただ、残業をして頑張っていることだけで評価されているのであれば、それはモヤっとします。また、昇格は推薦がベースになっていますが、会社側の判断だけで、自分の場合は、どう働きたいのかという意思確認がなかったのも気になります。昇格や評価について、双方の対話が必要かなと思います。
北橋:評価のフィードバックは基本ルールとして推進していく必要がありますし、評定の根拠は上司から部下に伝えるべきだと考えます。今の人事考課制度をいかに実効性のあるものにするかは、現場によって課題があると認識し、考課者となる管理職のレベルを高める必要があると感じます。また昇格によりグレードが上がるということは、役割の大きさ、重みが変わることですので、期待を込めて本人に伝えなければいけません。一方で「どう働きたいのか」には、個々の強みや志向性を生かせる職群制度への改革が必要です。特に専門・専任職は定義や要件を再度整理し、パートナーのキャリアの選択肢の幅を広げていきたいと考えています。
道下:相対評価から自分の評価が見えてくるところもあると思います。変だなと思ったことは一度もないのですが、周りを見ると、年功序列的な部分があると感じることはありますし、それはキャリア採用で入社した社員に賃金面での不利益な部分もあると感じています。
北橋:年功序列的なところについては、当社の企業風土的な部分かもしれません。これからの時代は、過去に培ってきた経験だけでは乗り越えられない問題がかなり出てきます。年齢、性別などの属人的な要素に関係なく、優秀なリーダーを輩出していけるようにしたいと思います。
篠田:当社は誠実で協調性の高い社員が多く、仲間意識の強さが温かい職場風土を築いているように感じます。ただそういう組織によくある傾向として、優秀な人材を部署内に留めようとしてしまうことがあります。
これまでは人材に余裕があり、組織をしっかり固めて効率的に働くことで成果を上げてきました。しかし、今のように人手不足と急速な環境変化の中では、社内人材の能力やスキルが見えづらいことは企業にとってリスクです。
今後は、社員の持ち味やスキルを全社的に把握し、キャリアの選択肢と結びつけながら柔軟かつ戦略的な配置を進めることが重要です。人事制度と組織風土の両面から改革を進め、取り組みを丁寧に発信することで、社員の納得感と情報の透明性につながると考えます。
今後の制度改革の方向性
Q5今日の座談会を踏まえ、今後、どのような制度改革を進めていきますか。
北橋:グレード、育成、考課の3つの制度が有機的につながり、その関連度を高めていけるようにしたいと思います。三協立山がパートナーと共に成長するために、総合職と管理職を対象に「求める人材像」と「求める期待役割」を定めていきます。それを基に、現状とのギャップを解消し、各制度を相互に関連性を持たせて確立させることで、「三協立山は変わる」という大きな志をもって運用します。「パートナー」というと聞こえが良いですが、それは相互に成長していくためにギブ&テイクの関係性を強めることでもあります。組織の構成人員が今後減る中で、DXやIT・AIも活用しながら、一人ひとりの持ち前を最大限発揮できる組織にすると同時に、一人ひとりの働く価値観を踏まえ、そのモチベーションを大切にしてタレントを最大限活用していきたいと思います。
島田:おそらく今の40代の社員は、数年後、様々な仕事が自分たちの世代に圧し掛かる不安を漠然と持っているように思います。そこを考えると人事改革は厳しさを伴うかもしれませんが、私は必要なことだと捉えています。会社の課題や、その解決に向けた取り組みについて、今まで以上にわかりやすい情報発信をしていただければ、一人ひとりの意識も前向きに変わるのではないでしょうか。
道下:会社が行うエンゲージメント調査とは別に、労働組合でも毎年組合員アンケート調査を実施しています。その結果を見ると会社の将来性に対して不安を抱えている社員もいると感じています。今日の話を伺い、当社が、パートナーから選ばれる会社にしていくためには何が大事なのか、労働組合としても、社員の生の声や、他社の取り組み事例などの情報をどんどん提案していければと思います。
篠田:北橋部長がおっしゃった、上下関係なく相互にリスペクトし合うパートナーの関係性がベースにあることはとても大事です。人手不足の中で、同時並行で改革を進めていくと、混乱したり不安に思ったりする人も出てきます。社外取締役という立場から、当社がより良い会社になるよう、将来の成長ビジョンの実現にしっかり貢献していきます。






